道草料理研究部

近所で食べられるものを探して見つけて料理して食べるブログだよ。さいきん狩猟免許とりました。

冬の手仕事。魔女の空飛ぶ軟膏をつくろう!

冬の間というものは、食料を手にいれるのが難しいものです。

 
多くの山菜野草などは春のやわらかな新芽を食べるのが主であり、夏には固くなり、秋には茶色くすすけてしまいます。
冬には次の春にむけて種となり土の中で、または幹の中にしっかりと養分を蓄えます。
 
また、生き物も活発になるのは春から夏にかけて。パートナーを探しアピールのため、または子育てのためにと、せっせと食料を集めます。
秋から冬にかけては、また次の緑ゆたかな季節のために、あるものは地下に潜り、あるものは海の底でじっとしています。また、あるものは卵を産んで生涯を終え、次の世代に引き継ぎます。
 
しかし、このブログではそれでは困るのです。
ネタがないのです!
 
冬の間なにかできるものはないか…、冒険者レベルもあげたいし…
と本をめくっていたところ ビビっときたのが「魔女の軟膏」でした。
筋力パラメータばかりを上げての脳筋プレイもいいですが、魔法レベルをあげればグッと冒険への力になるでしょう。
というわけで今回は西村佑子さん「魔女の薬草箱」という本をネタにすすんでいきます。

 

 さて魔女といえば、ほうきにまたがって空を飛ぶ。というイメージがありますが、実際にはほうきでなく、なんでもよかったようです。あるときはフォークであったり、雄山羊や豚でもあったようです。

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雄山羊に乗る魔女の様子(アルブレヒト・デューラー画「魔女」1500年ごろ)

大事なのは何に乗っていたか。ではなく、実は魔女の秘薬「魔女の軟膏」を塗っていたことなのです。それを塗ることでフワリと浮いて空を自由に飛び回ることができたのでした。

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台所で体に軟膏を塗る魔女(作者不詳)

では魔女の軟膏とは一体、どのようなものであったのでしょうか?
魔女はサバト(黒ミサ)に定期的に参加していました。

サバトとは、悪魔の名のもとに洗礼をうけ、夜通し宴会をし、まぐわい、悪魔の力を授かる。そのような会合だったようです。

そして、魔女たちはそのサバトに向かうために、魔女の軟膏を体に塗り、奥深い山の中にいる悪魔のもとにむかったというのです。

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サバトの様子(ハンス・バルドゥング・グリーン画「魔女のサバト」1510年

 そして悪名高い魔女裁判の際、魔女たちは尋問にかけられ、魔女の軟膏のレシピもいくつか魔女たちの口から引き出されました。
 
「世界魔女百科」より
【レシピ1】①ドクムギ、ヒヨス、ドクニンジン、赤と黒のケシ、レタス、スベリヒユ。②これらを合わせたもの4に油6を準備する。
・ドクムギというのは、麦に有毒なカビが麦角菌が繁殖したもののようです。
・ヒヨスというのは、ナス科のヒヨスという植物で精神に作用するアルカロイド系の物質が含まれています。
・ドクニンジンというのは、セリ科の植物。毒性が強い。アルカロイドのコニインが含まれる。ヨーロッパ原産だが、北海道にも自生する。
・ケシは、ご存知アヘンの材料です。道端にポピーはよく生えていますが、あれはヒナゲシといい、アヘンの材料になるのはアツミゲシ、ボタンケシといった種のようです。
 
と、とりあえず【レシピ1】を見ていきましたが、なかな手に入りづらいものばかりです。そもそもアヘンは犯罪ですね。
できればAmazonでなど、普通に手に入るものでなんとか作りたいものです。
 
で、他にしらべたところ
【レシピ2】
ベラドンナ、ヒヨス、マンドラゴラ、ドクニンジン、ヒマワリの種、アサ。
 
というものがありました。これは16世紀にフランスで古い壺が見つかり、解析したところ【レシピ2】に書かれた成分がみつかり、幻覚作用の強い品種が多いことから「魔女の軟膏」が入っていたのだろうと推測されています。
 
これを見てピン!ときました。
実は私は以前、フランスの種屋からマンドラゴラの種をとりよせて育てていたことがあったのです。育ててて良かったマンドラゴラ!
 
<マンドラゴラ生育の様子です>

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フランスの種屋さんから購入したマンドラゴラの種

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順調に成長したマンドラゴラ

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掘り出したマンドラゴラの根っこ。もちろん犬にくくりつけて引き抜いたので、叫び声を聞かずにすみました。

 
ということで、まずマンドラゴラの根が手に入りました。
 
・ベラドンナは虞美人草と呼ばれ、筋肉を弛緩させる効果があります。また瞳孔が開き、目をらんらんと輝かせ、女性を美しくみせる効果もあるといいます。
ベラドンナも手に入りにくい植物なのですが、シーボルトによると日本に自生する「ハシリドコロ」という植物が一致するそうです。
そして「ハシリドコロ」の成分は一般に薬として販売されています。ハシリドコロの成分ロートエキスはなんと赤玉に含有されているのです。

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ということでベラドンナも手に入りました。
 
また、麻の実もamazonにて購入しました。

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いわゆるヘンプシードというもので、加熱処理してあるので土にまいても発芽しないものです。今回はこれで代用するとしましょう。
 
ヒマワリの種はうちに大量にありました。

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春にはいつもヒマワリの種をバードフィーダーにのせてシジュウカラを呼んでいたのでした。鳥寄せやっててよかった!
 
これで4つ手に入りました。
残りですが、ヒヨスとドクニンジンは手に入りません。
 
ですが【レシピ1】のケシを加えましょう。
ケシの種はポピーシードとしてスーパーに売っています。アンパンの上にのってる粒つぶ。あれですね。本物のケシだと違法なので、スーパーのポピーシードで代用しましょう。

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さあ、できる限りの材料は揃えました。
若干オリジナルになりますが、「魔女の軟膏」つくっていきましょう。
 
しかし問題がありました。材料は揃ったのはいいのですが、ここからどうやって作るのでしょう?資料には材料しか書いてありませんでした。
そもそも「軟膏」とは一体何なんでしょう?
 
ブリタニカ国際大百科事典によると
軟膏
油脂類(ワセリン、ラノリン、グリセリン、蝋など)を基材とし、それに主薬を混ぜた外用薬。外傷や皮膚病などの治療に用いる。
 
だそうです。ということで、今回は蜜蝋を用意しました。

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ほんとはワセリンでもよかったのですが、自然由来の14世紀〜17世紀にも使われていたもののほうが魔女っぽいですよね。こういうのは気分ですよね!

 

というわけで全ての材料がそろいました。

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それでは、早速つくっていきましょう!

まず、マンドラゴラをスライスしようとしたのですが…

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硬い…。半年くらい乾燥させてたので水分がぬけきってカチカチになっていました。

ノコギリでなんとか半分に切れましたが、これ以上は無理です。マンドラゴラはこのまま投入しましょう。

 

次にヒマワリの種を割っていきます。手では割れないのでラジオペンチを使います。

すごく地味な行為ですが、冬の手仕事を楽しみましょう。

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 割れたら、すり鉢で粉砕していきます。

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次に、ポピーシードも加えさらに細かくしていきます。

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次に赤玉を処理します。

赤玉の赤さですが、これは生薬の成分由来というわけではなく赤色102号などの合成着色料で赤く色をつけられています。このままでは軟膏が赤く色づいてしまうので、赤玉を洗います。

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完全に赤が落ちると、このような見た目です。まだら模様だったんですね。

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では赤玉の中身を加え、さらに混ぜます。

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混ぜ終わった状態がこんな感じです。まあ…、完全に混ざってないですがどうせ煮込むのでこんなもんでいいでしょう。ちなみにすっごい香ばしい、いい匂いがしてきました。

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麻の実の処理はこんな感じです。すり鉢ですると、バチバチとすごい音がして麻の実が割れていきます。

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というわけで、素材の下処理は終わりました。ちなみにすごくいい匂いがしています。

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それでは、これを蜜蝋で煮ていきましょう。まず蜜蝋を溶かします。

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ある程度とけたら、追い油を追加します。蜜蝋を使用したリップクリームを作ろうなどのサイトを見ると、他の良い香りの油を足してるところが多かったです。僕もそれにならいましょう。ココナッツオイルを足します。これは完全に好みですので、みなさんもご自分の好きな油を足していただければと思います。

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すべて溶けたらマンドラゴラを煮ていきます。見た目は完全に唐揚げを揚げているようです。

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ある程度煮えて、マンドラゴラの成分が蜜蝋に移ったら取り出し、残りの素材を加え

さらに煮ていきましょう。

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最後にまたマンドラゴラを足してじっくりと低温で成分を抽出します。

注意すべきは、高温で熱すると沸騰して素材が溢れてしまいますので、弱火で沸騰したら火をとめ、固まるぎりぎりまで放置を繰り返すことです。やはり魔女の軟膏なのですから三日三晩寝ずに火の番をするくらいの覚悟はほしいところです。

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それでは漉していきます。細かい粒子が混ざっていますので布巾など細かい目のもので漉しましょう。

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そして、漉した状態がこれです!

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そして、これを常温で放置して固めると…

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 「魔女の空飛ぶ軟膏」完成です!

この怪しげな色、いかにもな感じですね。 

魔女は、この軟膏を全身にまんべんなく塗りホウキにまたがってサバトに向かったのです。

amazonなどで手に入るものだけで作ったので、効果は薄いかもしれませんが、ドラえもんが若干浮いているくらいは飛べるのではないでしょうか。ひとしれず、ちょっとだけ浮いた状態で、これから毎日すごしたいと思います。

 

みなさんも、冬の手仕事として「魔女の空飛ぶ軟膏」つくってみてはいかがでしょうか。